
ここ数年、コンプライアンス問題や労働問題と並び、企業に対応が急がれている問題の1つが「パワハラ・セクハラ問題」となります。
パワハラ・セクハラに関しては人事だけの問題ではなく全従業員に関わる問題で、各種機関の調査などを見ると企業のパワハラ・セクハラ問題に対しての施策の実施率はかなり低い水準となっています。
原因としては経営陣と従業員の認識のズレや、そもそもどこから手を付けていいのかわからないと言った悩みが多く見受けられます。
今回は人事担当がどのような視点でパワハラ・セクハラ問題に対応すべきなのかポイントを絞ってご紹介したいと思います。
身近なところでパワハラ・セクハラが潜んでいる
実はパワハラ・セクハラに代表されるハラスメント行為は意外に身近に潜んでおり、当人にはそのような意図がなくとも受け取る側が不快、苦痛の場合はそれに当たります。
職場において注意が必要なハラスメントにはパワハラ・セクハラに加えて、妊娠・出産・育児・介護休業等に関するハラスメントが挙げられます。
セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクハラとは、相手が不快に感じるような性的な言動で、職場環境を悪化させること。またそれに対する対応によって不利益を与えたりすることを指します。
“性的な言動”であれば、男性から女性だけなく、女性から男性、または同性に対してなど、性別や性的指向・性自認に関わらずセクハラとなる可能性があります。
身体への不必要な接触や性的な冗談・質問などはもちろんですが、性的な言動で周りにいる社員の就業意欲を低下・能力発揮を阻害する行為などもセクハラに当たります。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワハラとは、職場内での優位性を背景に、精神的または身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為を指します。
職務上の地位や人間関係、専門知識など、さまざまな優位性に基づく行為がパワハラ当たり、上司から部下に対してのみではなく、先輩・後輩や同僚間、部下から上司に対して行われる場合もあります。
叩く・殴る・蹴るなどの身体的な攻撃はもちろん、ほかの社員の前であえて怒鳴りつけるなどの精神的な攻撃、無視、不当な形での降格や雇用不安を与えることも含まれます。
業務の適正な範囲を超えるものがパワハラと見なされますため、机・壁を叩いて脅かしたり、業務外の行動を強要したり、遂行不可能なほど過大な要求や、逆に能力・経験とかけ離れた過小な要求をすることも該当します。
妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント
パワハラ・セクハラに加え、職場においては妊娠・出産・育児休業・介護休業等(以下、「妊娠等」とする)に関するハラスメントにも注意が必要です。
これは、妊娠等に関する制度を利用したことなどを理由に、就業環境が害されたり、不利益扱いを受けたりすることを指します。
妊娠・出産したことによる嫌がらせ、妊娠等に関する制度の利用を阻害するような言動、制度を利用したことによる嫌がらせなどがハラスメントに当たります。
妊娠等に関する制度の利用によって、解雇や契約更新の拒否、減給・降格、不利益な配置転換などをすることは不利益取扱いに該当するので注意してください。
予防に力を入れる
一度でもセクハラ・パワハラによるトラブルが社内外で公になってしまうと、最善の対策を取っても、関係者間の人間関係が元通りになることはほとんどありません。
パワハラ・セクハラは、“問題が起こってから対処するのでは遅い”ということです。
問題が起きたあとの対処マニュアルは意味がなく、問題が起きる前から、セクハラ・パワハラを効果的・効率的に「予防」する施策にこそ意味があるのです。
セクハラ・パワハラ予防する施策
- ルール作り
- 仕組み作り
- 教育・広報
就業規則等でセクハラ・パワハラを明確に禁じ、罰則も厳しく設定する会社としてのルール作りが1番重要となります。
その次に、最初に決めたルールをどのように運用し、従業員に対してどう守らせるのか決める仕組み作りがポイントとなってきます。
最後に、「教育・広報」となります。ルールや仕組みを継続的に運用するため、内容を従業員へ浸透させ、徹底的に意識付けさせる必要があるのです。
まずはこの3つに分類される施策を恒久的に実施し、セクハラ・パワハラ問題の防止に努めてください。
パワハラ・セクハラの対策~ルール作り~
法的に定められている義務の範囲
セクハラやパワハラ、妊娠等に関するハラスメントについて、それぞれのハラスメントそのものを明確に禁止する規定や直接的な罰則などはありません。
ハラスメントは従業員の意欲・自信や心身の健康を損なう恐れがあるだけでなく、そういった問題を放置していたなどの場合、企業側が法的責任を問われることがあります。
男女雇用機会均等法および育児・介護休業法においては、職場において妊娠等を理由とする不利益取扱いを禁止されています。
セクハラや妊娠等に関するハラスメントを防ぐため、以下のような雇用管理上必要な措置をとることが事業主に対して義務付けられています。
方針の明確化および周知・啓発
セクハラ・妊娠等に関するハラスメントの内容とそれを忌避する方針、加害者は厳正に対処することなどを明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発する。
相談等に対して適切に対応するための体制整備
相談窓口をあらかじめ定め、担当者が状況に応じて適切に対応できるようにする。また、ハラスメントに該当するか否かはっきりしない場合も、広く相談に応じる。
事後の迅速かつ適切な対応
申し出があった場合は事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実であれば速やかに被害者に配慮した対応を行う。また加害者に対しても適正な対処を行い、再発防止の措置を講ずる。
妊娠等に関するハラスメントの原因・要因を解消する措置
事業主や妊娠等した労働者、周りの労働者の実情に応じて、業務体制の整備などの必要な措置を行う。
上記と併せて講ずべき措置
相談者・加害者のプライバシーをしっかりと保護する。相談や事実確認への協力を理由として不利益取扱いをしてはならないことを定め、周知・啓発する。
上記5つの措置は、セクハラや妊娠等に関するハラスメントを防止するための法的な義務となっておりますので実施していない場合は、早急に対応しなければなりません。
これらを踏まえ、以下で紹介するようなハラスメント予防の施策を行なっていくことで、将来的に起こりうる問題のリスクを確実に下げることができるでしょう。施策1・2・5は上記の義務に関連する項目ですので、特に重要度が高くなっています。
施策1:雇用契約書・就業規則への明記
顧問弁護士・顧問社労士と相談し、就業規則に「セクハラ・パワハラを禁止する」趣旨の文面を、罰則とセットで明記することが有効です。
また同様の趣旨の文面を明記した「誓約書」に記入させたり、雇用契約書を従業員と再度取り交わしたりするのも非常に有効な手段となります。
パワハラ・セクハラの対策~仕組み作り~
施策2:社内ホットラインの設置
いわゆる内部通報制度の整備に当たります。本社に事務局と専用の社内ホットライン(e-mailアドレス、直通電話)を設定します。
セクハラ・パワハラ問題が発生したとき、被害を受けた社員が直接相談・通報できるようにすることで非常に効果がある施策となります。
事務局は女性主体で、通報用のホットラインは「通常用」(男女共用)と「女性専用」の2本を準備し、匿名性を確保したうえで、ホットラインに挙がった情報が、経営陣や顧問弁護士・社労士までスムーズに直結するような連絡体制にしておくことが重要です。
施策3:内部監査体制の強化や定期的なアンケート
人事部主体での内部監査の強化や各部署での自主点検表の記入・アンケート調査、ヒアリングの仕組みづくりを進めていくことも有効な手段となります。
企業資格を運用していない場合も、人事部主体での監査体制を強化することで、同じ効果が得られます。
施策4:社員評価制度と連動させる
内部通報の事実確認結果としてや、評価査定前タイミングで、定期的にパワハラ・セクハラに関する社員向けアンケートを取り、社員評価制度と連動させるのも非常に効果があります。
この場合の注意点としては、何をしたらどの程度評価に影響するのかという点を、社員研修や説明会の場で事前にわかりやすく説明しておく必要があります。
パワハラ・セクハラの対策~教育・広報
施策5:社内告知の強化
パワハラ・セクハラについて、社内ルールや規則・仕組みを変更したり、研修を実施したりした際は、必ず社内での周知を徹底が必要となります。
グループウェアの掲示板や各種会議、朝礼などで、「しつこい」と思われるくらいに徹底的かつ定期的に告知を行うと、しっかり意識付けすることが必要です。
施策6:社員研修での教育
セクハラ・パワハラ防止のために、定期的に社員研修を実施するのも効果的です。個人情報保護・情報セキュリティ系のコンプライアンス研修と一緒に実施しましょう。
同業他社での実際のパワハラ・セクハラ事例を取り上げ、社員へ“自分事”として認識させることも有効です。管理職向けと一般社員向けに分けて開催し、それぞれの立場・目線に応じたコンテンツを作り分けるなどの工夫を凝らすことで、効果が最大化しましょう。
施策7:新入社員向け対策
大切なポイントは、新入社員研修で説明するだけでなく、入社説明会や採用面接の段階から何度も念押ししておくこと。こうすれば、確実に「セクハラ・パワハラ」に対する意識向上が図れます。
長期的に取り組むこと
上記7つの施策は、できるところからでもいいので手を付けてください。実施に当たって下記2点は必ず押さえておいていただきたいポイントとなります。
- 必ず経営幹部の協力を得て実行すること
- 長期での取り組みを実施すること
セクハラ・パワハラをなくすためには、基本的に若手社員から管理職以上のシニア社員まで、全従業員に対して呼びかける必要があります。
指示・対策を徹底して浸透させるには、経営トップの協力が前提となるため、ひとつひとつの施策に関して、必ず経営層と密に連携を取ったうえで進めていきましょう。
いったん仕組みとルールを作ったら、繰り返し粘り強く社員に教育・啓蒙を続けていくことで、予防策が機能するため短期間で辞めてしまっては意味がありません。
セクハラ・パワハラ癖のある要注意社員だけでなく、それ以外の社員全員が問題意識を共有しないと、予防は有効に機能しないので、長期計画を立てて実行してください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?自分の会社では問題になっていないと安心していませんか?ハラスメントは発覚してからでは遅いのです。
人事の業務ではないとおっしゃる担当者もいらっしゃるかと思いますが、その場合は周りに軽く相談いただくくらいでも構いません。
是非、トラブルに発展する前に予防策を実施することをお勧めいたします。
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最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。